嘉兵衛かへえ)” の例文
旧字:嘉兵衞
五十過ぎて、たった一と粒種——それも龍宮の乙姫様おとひめさまのように美しい娘に死なれた、三河屋嘉兵衛かへえ夫婦の歎きは、見る目も哀れでした。
「百姓は百姓でも上畑かみはた嘉兵衛かへえといって、この界隈かいわいじゃ名の知れた物持でござんす」
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ここの松下嘉兵衛かへえなどは、根が地侍だし、嘉兵衛自身が素朴な人だったが、それでも、清洲きよすあたりの尾張侍の邸宅とは、そのたたずまいからして違っている。どことなく豊かなのだ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
栃内とちない和野わのの佐々木嘉兵衛かへえという人は今も七十余にて生存せり。このおきな若かりしころ猟をして山奥に入りしに、はるかなる岩の上に美しき女一人ありて、長き黒髪をくしけずりていたり。顔の色きわめて白し。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
物をただすと、あべこべに、おぬしは何者だなどと大言を吐きますから——当地の御被官ごひかん、松下嘉兵衛かへえ様でいらせられると、申し聞かせましたところ、ふーむと、怖れ気もなく腰をのば
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松下嘉兵衛かへえなどは、義元直参じきさん旗下はたもととはちがい、地侍の被官ひかんだったが、それでも、日吉の知っている清洲きよすや、那古屋なごやや、岡崎あたりの邸とは、比較にならぬ程、どこか豊かだし、客足も多く
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)