けし)” の例文
かれは血に飢えている犬をけしかけて、お作を咬ませたのであった。そうして、自分の運命をも縮める端緒たんちょを作り出したのであった。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「幸ひ、大したあとも殘るまいといふことぢや、——しかし、半九郎は死んでも、けしかけた者があるだらう。その邊かりのないやうに」
で、イギリス人は『気をつけろ、お前の方でこうこういう風にしなければ、おれはすぐさまこの犬をお前にけしかけてやるぞ!』
瑠璃子夫人はと見ると、その平静な顔に、けしかけるやうな微笑を湛へて、『貴君あなたも負けないで、しつかりおやりなさい。』
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
今覗いて見れば追掛けたのではない酒屋の御用が犬をけしかけたのだ、私は只怖いと思ったものだから追掛けられたと心得たので、誠に相済みません
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
犬をけしかけながら犬の先になツて走る腕白小僧や、或は行路病者、𢌞國巡禮、乞食僧侶、或はまた癩病患者、癲疳持てんかんもち狂人きちがひ、鼻ツかけ、眼ツパ、びツこゐざり
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こんなことを云ってけしかけるから、いよ/\騒ぎは大きくなります。大勢は侍を取り囲んで、お金の店のなかへ引摺り込みました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
瑠璃子夫人はと見ると、その平静な顔に、けしかけるような微笑をたたえて、『貴君あなたも負けないで、しっかりおやりなさい。』
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
妙に怒らせでもして、あの犬をけしかけられちやかなはないから、近所の衆は見て見ない振りをして居ますがね。
その半九郎が誰かにけしかけられたに違ひあるまい。どうぢや平次、その半九郎をあやつつた曲者はわかつたかな
「撲つたり叩いたり、水を打つ掛けたり、犬をけしかけたりして見たが、命も見得も棄ててしまつて、お喜代の顏を一と眼見たさに喰ひ下がる、戀の亡者には手の付けやうがない」