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秋はここにもくれないに照れる桜の葉はらりと落ちて、仕切りのかき茶山花さざんかかおりほのかに、線香の煙立ち上るあたりには小鳥の声幽に聞こえぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
しばらくすると、二歳ふたつになる子が、片言交かたことまじりに何やら言う声がする。み割れるような、今の女中の笑い声が揺れて来る。その笑い声には、何の濁りもわだかまりもなかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)