呻声うめきごえ)” の例文
旧字:呻聲
道化は喉にひっかかるような呻声うめきごえと共に胸を押えてよろよろと、奇術用の卓子テーブルへよろけかかった。観客は勿論もちろん、それも芝居だと思っていた。
劇団「笑う妖魔」 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
夜半よなかに一度、隣に寝ている男の呻声うめきごえを聞いて為吉ためきちは寝苦しい儘、裏庭に降立おりたったようだったが、昼間の疲労つかれで間もなく床に帰ったらしかった。
上海された男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
呻声うめきごえを立たせないためで、そのままでしばし絶え行くラザレフの姿を眺めていたのだよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
九度目に寝つこうとした時、怪しい呻声うめきごえが下男部屋の方から聞えた。くびを抑え、ピストルを持って、下男部屋へ行く。みんな未だ起きていてスウィピ(骨牌カルタ賭博とばく)をやっている。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と云おうとしたが、ただ便たよりない呻声うめきごえ乾付からびついた唇を漏れたばかり。
と、大竹女史が呻声うめきごえをあげた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆうべ深夜に聞いた、悲しげな女の呻声うめきごえを思出したのである。給仕ボーイさらに声をひそめて
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、そう云い終ると同時に、突然ジナイーダはかすかな呻声うめきごえを発してクラクラと蹌踉よろめいた。法水は危く横様よこざまに支えたが、額からネットリした汗が筋を引いて、顔面は蝋黄色を呈している。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と云うような奇妙な呻声うめきごえが起った。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)