周旋屋しゅうせんや)” の例文
もと北の新地にやはり芸者をしていたおきんという年増としま芸者が、今は高津に一軒構えてヤトナの周旋屋しゅうせんやみたいなことをしていた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
その向う横町に代言だいげんだか周旋屋しゅうせんやだか分らない小綺麗こぎれい格子戸作こうしどづくりのうちがあって、時々表へ女記者一名、女コック一名至急入用などという広告を黒板ボールドへ書いて出す。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出会いがしらの声に、誰かと思えば、横丁よこちょうに住む周旋屋しゅうせんやおうというせ婆さんだ。この口達者な婆さんがまた、もひとり後ろに、ふとッちょなでぶ婆さんを連れていて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時にこういううちの一人娘は今頃周旋屋しゅうせんやえばになってどこぞで芸者でもしていはせぬかと、そんな事に思到おもいいたると相も変らず日本固有の忠孝の思想と人身売買の習慣との関係やら
木賃宿を泊り歩いているうちに周旋屋しゅうせんやにひっ掛って、炭坑たんこうへ行ったところ、あらくれの抗夫達がこいつ女みてえな肌をしやがってと、半分は稚児ちごいじめの気持と
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
周旋屋しゅうせんやの手にかかって手数料を取られ、ろくでもない処へはめ込められるより、わたし自身で道をつけてやる方が結局女の為めだと考え、お参りからすぐに親里へドロンをきめさせ
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)