呑吐どんと)” の例文
かれは海と陸にまたがって、いつも口いっぱいオゾンを呑吐どんとしている。その土と水の境界に、石で畳んだ波止場カイスがあった。
諸君もそれを感じられるであろうが、日比谷劇場は日におそらく数千数百の人々を呑吐どんとしているに違いない。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
T公園といえば、その地域の広さ、日々呑吐どんとする群衆のおびただしさでは、大阪随一の大遊楽境であった。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一向宗までも呑吐どんとして、諸国への使つかいは一向坊主にさせているところなど、また信玄一流の大きさで、飯綱の法をおこなったかどうか知らぬが、甲州八代やつしろ末木すえき慈眼寺じげんじ
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
雨戸をらないお屋敷のまわり縁に夜の名残りがたゆたって、むこうの石燈籠いしどうろうのあいだを、両手をうしろにまわし庭下駄を召して、煙のようにすがすがしいうす紫の明気をふかく呑吐どんとしながら
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
信淵の如きは宇内うだい呑吐どんとするの見識あり、小生偶然同行の雲井なにがしの如きは、白面の一書生には候へ共、気概勃々として、上杉謙信の再来を思はしむるものあり、快心の至りと存じ居り申候。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
早く言えば、空というひとつの高いはっきりした存在があるのではなく、ろんどんの呑吐どんとする煙が厚い層をなして、天と地を貫いて立っているにすぎなかった。その低空にがあっと音がする。
土耳古トルコの詩人・セルビヤの詩人・諾威ノウルエーの詩人・波蘭土ポーランドの画家・ぶらじるの画家・タヒチの画家・日本の画家が宵から朝まで腰を据えて、音譜と各国語と酒たばこのかおりと芸術的空気を呑吐どんとして