吟哦ぎんが)” の例文
しかるに是等学芸の士は、平民に対してちとの同情ありしにあらず、平民の為に吟哦ぎんがせし事あるものにあらず、平民の為に嚮導きやうだうせし事あるものにあらず
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
蘭軒は病んではゐたが、其病は書を裁することをさまたぐる程のものではなかつたらしい。前年吟哦ぎんがを絶つてゐた故が不審である如く、此年に不沙汰をした故も亦不審である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
十一日午前七時青森に着き、田中ぼうう。この行風雅ふうがのためにもあらざれば吟哦ぎんがに首をひねる事もなく、追手をけてぐるにもあらざれば駛急しきゅうと足をひきずるのくるしみもなし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼を悲しむと看取せんか、我も亦た悲しめるなり。彼を吟哦ぎんがすと思はんか、我も亦た吟哦してあるなり。心境一転すれば彼も無く、我も無し、邈焉ばくえんたる大空の百千の提燈を掲げ出せるあるのみ。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「玄亭謹啓。御道中御壮栄欣抃きんべん吟哦ぎんが可想おもふべし。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)