合卺ごうきん)” の例文
この覩易みやすき理由はあるにも関らず無教育の青年男女が一時の劣情に駆られて、みだり合卺ごうきんの式を挙ぐるは悖徳没倫はいとくぼつりんのはなはだしき所為である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世には六十を越してから合卺ごうきんの式を挙げる人もままあると聞いているから、わたくしの将来については、わたくし自身にも明言することはできない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこで夫婦は衾幄へやを同じゅうすることになったが、それは月の世界が必ずしも空に在るときめられないように思われるものがあった。そして合卺ごうきんの後には、ひどく心の満足をおぼえた。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
アルプスのシャモニーへ煙霞えんかの旅としゃれたのはよかったが、合卺ごうきんの夢もまだ浅い新妻が、ネヴェというたちのわるい濡れ雪を踏みそくなって、底知れぬ氷河の割目に嚥みこまれてしまった。
白雪姫 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
前回かりに壮夫わかものといえるは、海軍少尉男爵だんしゃく川島武男かわしまたけおと呼ばれ、このたび良媒ありて陸軍中将子爵片岡毅かたおかきとて名は海内かいだいに震える将軍の長女浪子なみことめでたく合卺ごうきんの式をげしは、つい先月の事にて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)