口裏くちうら)” の例文
やさしくなったが、その口裏くちうらには、「こんど答えなければ本式に拷問してやるぞ」との含みがある。返事をしないわけにいかない。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
万吉が上手に口裏くちうらを探ってみると、そこのあるじは元甲賀組とも多少由縁ゆかりのあった者らしく、初めは気をすくませていた内儀も、だんだんすきゆるめてしゃべりだした。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内々同じような相談を持ちかけて私の口裏くちうらを引いて見るものが一度ならずあったのでございます。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
傷供養きずくようらしい傷供養もしみじみと出来そうもないゆえ、事のついでに今宵にもまたどこぞ長旅へ泳ぎ出そうかと存じておったが、どうやら話しの口裏くちうらを察するに、万更でもなさそうじゃな
そんな人たちに会っていさくさ口をきくよりも、古藤と話しさえすればその口裏くちうらから東京の人たちの心持ちも大体はわかる。積極的な自分の態度はその上で決めてもおそくはないと思案した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)