厨子づし)” の例文
袋の中をあらため候へば、小さき観音の像を厨子づしに収めて持ち候、又その厨子を包みたる紙を見ればやさしき女文字の文なり。………
そこには、石の阿彌陀や、石の厨子づし、石塔などが二三間おきに片側にならんでゐる。篝火はこの八十八ヶ所のためなのである。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
社司どもが、厨子づしなどをなげすて、また多くの人夫は、鎗の石づきなどでもって、それらを打ちくだき、火中に投げました。
仏間には田舎にいたころのぴかぴかする仏壇がそのまま据えてあり、その中にまだ白木のままの母の位牌いはいが、黒塗りの小さな寄せ位牌の厨子づしとならんで、さびしく立っていた。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
棚の厨子づしはとうの昔、米や青菜に変つてゐた。今では姫君のうちぎはかまも身についてゐる外は残らなかつた。乳母はき物に事を欠けば、立ち腐れになつた寝殿しんでんへ、板をぎに出かける位だつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「板橋の東景庵とうけいあん藥師如來像やくしによらいざうが盜まれた。これは慶運作の御丈け四尺五寸といふ大した佛像だ。厨子づしは金銀をちりばめ、佛體には、玉がはめ込んである、が十一年前の春盜まれて、未だに行方が知れない」
右の物件御神体に祭り替申候、其節、厨子づし等を社司共より打ち抛り、又は多人数の内鎗の石突等を以て、打砕き火中致し候
然者しかれば先年一閑斎を狙ひ候は此の者の所為なること必定ひつぢやうに候。かのみぎり此の者の首は戦場に打棄て、観音の厨子づしと文ばかりを人知れずふところに入れて帰陣致し候間、桔梗の方逆心のことは誰一人も悟らず候。
「本堂の奧のお厨子づしの中から三寸二分の黄金佛、大日如來だいにちによらい