千住こつ)” の例文
むかし千住こつで何年とかお職を張り通したという耳の遠い留守居のばァさんをつかまえて(というのは三浦は独身ひとりものだった)
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「今戸の狐」ではしがない落語家の生活も千住こつのおいらんのなれの果ての姿も今戸八幡辺りの寒々とした景色とともに、よく志ん生は描き出してみせてくれる。
随筆 寄席囃子 (新字新仮名) / 正岡容(著)
およつは、園花そのばなと言って千住こつで勤めた女で、ねんが明けると、大した歓迎もしない芳年のところへころげ込み、女房気取りで三月四月も納まっていると言ったたちの女でした。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
が二人とも飽きっぽいんで、さんざっぱら可愛がったそのあげくには、千住こつか、品川か、新宿で、稼いで貰わなけりゃあならねえかも知れねえ。だがマアそいつは後のことだ。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
講釈師がよく饒舌しゃべる、天保水滸伝てんぽうすいこでん中、笹川方の鬼剣士、平手造酒猛虎ひらてみきたけとらが、小塚原こづかっぱらで切取って、袖口に隠して、千住こつの小格子を素見ひやかした、内から握って引張ひっぱると、すぽんと抜ける
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
入りかわり、立ち代りだからたまらない。むろん遊びに誘う、千住こつ、吉原、品川、足をふまない所はないが、お菊は、嫌な顔を見せたことがなかった。見せれば、梅渓よりも、兄弟たちの方から
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千住こつの大橋屋の濱夕てんで、お目にかけたいぐらゐのもので。へツ、御免下さい、親分さん」
武士も町人も奢侈おごりに耽った。初鰹はつがつお一尾に一両を投じた。上野山下、浅草境内、両国広小路、芝の久保町、こういう盛り場が繁昌した。吉原、品川、千住こつ、新宿、こういう悪所が繋昌した。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
千住こつの大橋屋の浜夕てんで、お目にかけたいぐらいのもので。へッ、御免下さい、親分さん」
千住こつの浜夕などに熱くなったのはどういうわけでしょう」
千住こつの濱夕などに熱くなつたのはどう言ふわけでせう」