北風ならい)” の例文
空は一面に曇って雪模様、風は少し北風ならいが強く、ドブン/\と橋間はしまへ打ち附ける浪の音、真暗まっくらでございます。
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
辻に黒山を築いた、が北風ならいの通す、寒い背後うしろからやぶを押分けるように、ステッキで背伸びをして
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神田から出た北風ならいの火事には、類焼やけるものとして、くら戸前とまえをうってしまうと店をすっかり空にし、裸ろうそくを立てならべておいたのだという、妙な、とんでもない巨大おおき男店おとこだなだった。
吹きもよおしていた北風ならい一煽ひとあおりに、火の魔の跳躍はほしいままとなり得た。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はい、屋根も憂慮きづかわれまする……この二三年と申しとうござりまするが、どうでござりましょうぞ。五月も半ば、と申すに、北風ならいのこうはげしい事は、十年以来このかたにも、ついぞ覚えませぬ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
北風ならいのせいだな、こちとらの知ったこッちゃあねえよ。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少し北風ならいが吹いて来る。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)