勃然ぼつねん)” の例文
黙然もくねんと聞く武男はれよとばかり下くちびるをかみつ。たちまち勃然ぼつねんと立ち上がって、病妻にもたらし帰りし貯林檎かこいりんごかごをみじんに踏み砕き
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
仏頂寺弥助は勃然ぼつねんとして怒り出したが、丸山勇仙はまだ半信半疑なのか、それとも、ここで仏頂寺をほんとうに怒らせては事になると考えたのか
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
勃然ぼつねんと怒り心頭に燃えた松平の家臣竹中左次兵衛、君塚龍太郎その他覇気満溢はきまんいつの若侍輩は幕の蔭に潜んでひそかに鉢巻襷の用意をした上、大刀の目釘に熱いしめりをくれて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は勃然ぼつねんと起ち上がりました。
中房なかぶさから意外な女の人と道づれになって、その女を途中でさらわれてしまい、どうでもいいようなものだが、勃然ぼつねんとして、思いあたって、義において見殺しはできないという心から
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
云わせも果てず黒装束の一人が勃然ぼつねんとした声で
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我が手腕うでの程はいかにという自負心が勃然ぼつねんとして頭を上げきたったのです。
どうしてもこの女をただ帰せないという考えが勃然ぼつねんとして起ったので——竜之助の心には石よりも頑固がんこなところと、理窟も筋道も通り越した直情径行ちょくじょうけいこうのところと、この二つがあって、その時もまた
竜之助は勃然ぼつねんと、垂れた首を上げる。