力弥りきや)” の例文
旧字:力彌
大三郎は組中でも評判の美少年で、黒の肩衣かたぎぬ萠黄もえぎの袴という継𧘕𧘔を着けた彼の前髪姿は、芝居でみる忠臣蔵の力弥りきやのように美しかった。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「はい、忠臣蔵で、力弥りきやとおかるの二役で、大向うをうならせたら——と、いう話があるそうで——お湯屋なんぞでは大した噂でございますよ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
由良之助ゆらのすけが春のや(逍遥)で、若狭之助わかさのすけが鴎外で、かおよ御前ごぜんが柳浪、勘平かんぺいが紅葉で、美妙はおかるよ。力弥りきやさざなみ山人なの。定九郎さだくろうが正太夫なのは好いわね。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
力弥りきやとしては、兵馬に少し骨っぽいところがあり、小浪こなみとしては、この女に少しあぶらの乗ったところがあるようだが、誰がどう見ても、尋常の旅とは見えないでしょう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
前髪の時分にゃあ忠臣蔵の力弥りきやか二十四孝の勝頼かつよりを見るようで、ここから船にお乗りなさる時は、往来の女が立ちどまって眺めているくらいでした