前檣ぜんしょう)” の例文
ふたりは前檣ぜんしょうの下へきて、その破損はそん個所かしょをあらためてみると、帆は上方のなわがれているが、下のほうだけがさいわいに、帆桁ほげたにむすびついてあった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そこへ激しい彼岸嵐に襲われて、左舷さげん船嘴せんしと一舷窓とがこわれ、前檣ぜんしょうの索棒がいたんだ。そしてそれらの損所のためにまたツーロン港にはいってきたのである。
探検隊は、古くからある捕鯨港のサレムで勢揃いをし、五月十九日の朝乗船「発見ディスカヴァリー」号には、前檣ぜんしょうたかく出航旗ブルー・ピーターがひるがえる。いよいよ、極北の神秘「冥路の国」へ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ポルトガルの海岸線を右に見て、一路ビスケイのまっただ中へさしかかる。前檣ぜんしょうに見張りが立っていたが、空は、風に飛ぶ層雲が低く垂れて、海との境界さえ判然しない。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
余は甲板上の前檣ぜんしょうにもたれて四方を見渡すに、眼に入るかぎり船もなく島もなく、ただ気味悪きほどの蒼き波間なみまに、一頭の巨鯨の潮ふけるが見ゆるばかり、かかる光景を見ては
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
かれは遠くを見渡して、陸地を待ち望みながら、前檣ぜんしょうのかたわらに立っていた。
と、またもやごうぜんたる音がして、全船ぜんせん震動しんどうした、同時に船は、木の葉のごとく巨濤きょとうにのせられて、中天ちゅうてんにあおられた。たのみになした前檣ぜんしょうが二つに折れたのである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
前檣ぜんしょう後檣こうしょうの残部などのもっとも重いものを、エイエイかけ声をして運んだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)