おろ)” の例文
もっと、今の感激をつきつめて、髪をおろし、袖ももすそも、ちきって、清楚なあまのすがたになりきってしまいたい念だけがあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうか、髪をおろしてくださいませ。髪を剃してしまえば、もう御所へもどれといっても、戻ることはできませぬ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それには、彼女たちの黒髪をおろすことは、どっちに取っても、絶対な誓いであり、反省の姿を持つことになる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「人の口はうるさいもの。二度とき縄目などにかかるまいぞ。——伊豆へ下られたら、すぐにもよき導師をたずね、おぐしおろして、この尼が志を無になさらぬようにの……」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「和子さま。和子様。——八幡大菩薩のお計らいで、ふしぎに助からせ給うたお生命いのちですぞ。いかなる者に強いられようと、そのお髪をおろしてはなりませぬ。一心、お髪をお惜しみなされませよ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遮那しゃなよ、おことも、はや十六とはなったぞよ。ことしは髪をおろさねばなるまい。出家は嫌いと云いおるそうじゃが、生れてより持って出た宿命、生い立ち、今の時勢など、もうわきまえがついたであろう。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)