刀創かたなきず)” の例文
この首はあの男ではございません。阿媽港甚内の首ではございません。この太いまゆ、この突き出たほお、この眉間みけん刀創かたなきず、——何一つ甚内には似て居りません。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
炉の横座に坐っていたくだんの旅人が、そのとき急にこちらを向いて、その険悪なかおつき、額から頬へかけて、たしかに刀創かたなきずがある、その厳しい面をこちらへ向けたかと思うと
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
右の肩下から、五寸ばかり定規ぢやうぎで引いたやうに斬り下げた刀創かたなきずは、さまで深いものではありませんが、血の出やうがひどいやうですから、隨分氣の弱い者は眼位は廻すでせう。
「似ている人間は、天下にいくらもいます。右腕みぎうでに古い刀創かたなきずがあるとか何とか云うのも一人に限った事ではない。君は狄青てきせい濃智高のんちこうしかばねを検した話を知っていますか。」
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右の肩下から、五寸ばかり定規で引いたように斬り下げた刀創かたなきずは、さまで深いものではありませんが、血の出ようがひどいようですから、ずいぶん気の弱い者は眼ぐらいは廻すでしょう。