出会しゅっかい)” の例文
旧字:出會
だがしかし、それが弦之丞であると知ると、江戸の大道で、かくも明白に出会しゅっかいしたあだと仇が、どうなりゆくのか、それも心配。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今度の事件において、霧原警部は非常な難問題に出会しゅっかいした。第一に、被害者が死に際に書いた、「ツノダ」の三字は何を意味するであろうか。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
琉球政治家の活動の範囲は北京から江戸の間にひろがっていたのであります。しかも年百年中、大変な難問題にのみ出会しゅっかいしつつあったのであります。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
大学を卒業して数年の後、遠き倫敦の孤燈ことうの下に、余が思想は始めてこの局所に出会しゅっかいせり。人は余を目して幼稚なりといふやもはかりがたし。余自身も幼稚なりと思ふ。
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宮川は、ようやく本当に矢部に出会しゅっかい以来の落付をとりもどすことが出来たのだった。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とっさま誠に残念でございます、小三郎薄命にしてかゝる眼病に相成り、御尊父の妄執を晴らす事もお刀の詮議をいたすことも此の盲目もうもくでは思いもよらず、又大野惣兵衞に出会しゅっかいいたす時あるとも
しかしてこの引込線は、かの機関手の死体の発見されたる地点よりはセント・ヘレン駅により近きをもって、問題の列車は、椿事に出会しゅっかいする前、該線の分岐点を通過せしものと信ずべき理由あり。
小太郎山こたろうざんとりでをきずく用意にかかっておりましたが、はからずも主君伊那丸さまが、穴山梅雪あなやまばいせつの手にかこまれて、きょう裾野すそのへさしかかるゆえ、出会しゅっかいせよという小幡民部こばたみんぶどのからの諜状しめしじょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この故に偽と悪とは優勢を引いて援護となすにあらざるよりは、不足偽ふそくぎ、不足悪に出会しゅっかいするにあらざるよりは、最後に、至善を敵とするにあらざるよりは、——効果を収むる事かたしとす。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)