冥助みょうじょ)” の例文
「こう進んで言いますが、すでに危篤な場合とすれば、しばらくもその志を実現させることによって仏の冥助みょうじょを得させたいと私は思う」
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
喜三郎は寺の門を出ながら、加納かのう親子や左近の霊が彼等に冥助みょうじょを与えているような、気強さを感ぜずにはいられなかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
はからずも、東平、東昌の二府を討って、幾人もの人傑を新たに迎え、また、稀代な神馬が二頭も手に入るなど、まことに天の冥助みょうじょ奇瑞きずいとしか思われん。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつかかみを落したのち、倉井村の地蔵堂じぞうどう堂守どうもりになっていたのである。伝吉は「冥助みょうじょのかたじけなさ」を感じた。倉井村と云えば長窪から五里に足りない山村さんそんである。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世間のそしりなどばかりを気にかけ神の冥助みょうじょにそむくことをすれば、またこれ以上の苦しみを見る日が来るであろう、人間を怒らせることすら結果は相当に恐ろしいのである
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
神も仏も冥助みょうじょれたまわぬ境界にちたのは、皆前生での悲しい約束事であろう、だれも永久の命を持たない人間なのであるから、少しは惜しまれるうちに死んで、簡単な同情にもせよ
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)