兎口みつくち)” の例文
兎口みつくちのせゐもあつたでせう、木戸札を鳴らして、無暗に「入らつしやい、入らつしやい、サア、今が丁度宜いところ——」
良人おっとになる奉行の息子というのが、兎口みつくち醜男ぶおとこなので嫌いぬいていたんですが、親と親との約束なのでどうにもならず、それで婚礼の席へは出たものの
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人がましいまともなつらつきを嫌い、目っかちやら兎口みつくち、耳なし、鼻欠と、醜いものを穿鑿せんさくして十数人も抱えになり、多介子たすけご重次郎、清蔵五郎兵衛という浪人上りの喧嘩けんか屋に赤鬼黒鬼と異名をつけ
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
或時は、兎口みつくちの守っ子に変な様子を見せて町内の鳶の者に尻を持ち込まれたり、或時は名の通った博奕ばくち打の囲い者と逢引して牛死半生の目に逢わされたりしました。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
片足ない奴、片腕ない奴、鼻の欠けた奴、耳の欠けた奴、唇の取れた奴、眉毛の抜けた奴、兎口みつくちの人間、傴僂せむしの人間……虫のように這い、犬のように寝そびれ、ウジャウジャと無数にかたまっていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兎口みつくちの百松は、見世物小屋の舞臺に、蝋燭らふそくを取つて立ち上がりました。
江戸で臨時に雇入れた囃方はやしかたと、木戸番の兎口みつくちの百松だけ、これも相模生れのお松と同郷で、お松には充分氣があるやうですが、至つて無口な上、自分の顏のみにくいことを百も承知をして居りますから