先斗町ぽんとちょう)” の例文
一層いっその事、やぶれかぶれに先斗町ぽんとちょうへでも遊びに行こうか、それとも、もう少し此処に辛抱して、気分の静まる折を待って居ようか。
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
先斗町ぽんとちょうあたりの絃歌の声が、鴨川を渡ってきこえてくる。後には東山が静かに横たわっている。雨の降った晩などは両岸の青や紅の灯が水に映る。
身投げ救助業 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
鴨川かもがわをはさんで、先斗町ぽんとちょうと祇園。春の踊りでも祇園は早く都踊りがあり、先斗町はそれにならって鴨川踊りをはじめた。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
京の先斗町ぽんとちょうをでも思い出させるような静かな新地には、青柳あおやぎに雨が煙ってのきに金網造りの行燈あんどんともされ、入口に青い暖簾のれんのかかった、薄暗い家のなかからは
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いつだったか、先斗町ぽんとちょうで有名な美人の吉弥きちやと一緒に何彼と話していた時、お高祖頭巾こそずきんの話が出ました。
好きな髷のことなど (新字新仮名) / 上村松園(著)
まことに「柳暗花明」とか「狭斜の巷」とか云ふ言葉は、あの頃の祇園や先斗町ぽんとちょうの遊里の雰囲気にそつくりあてはまつてゐるのである。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)