兄者あにじゃ)” の例文
もとよりです。懸命におさとしつかまつッた。けれど、耳にもかけるふうではない。……兄者あにじゃには、ここ数日、泣かんばかり出陣の儀を
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
I君は「次郎桜」の兄者あにじゃで、十七年前私共が千歳村へ引越す時、荷車引いて東京まで加勢に来てくれた村の耶蘇信者四人の其一人、本文に「角田つのだ勘五郎かんごろう息子むすこ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「勅が何ですっ、勅が。勅とあれば兄者あにじゃには、そんなにもありがたいのか。そむけないものなのか。兄者は近頃、どうかしてしまッている!」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、ろうのほのぐらいの外に、人影がさした。ひとりは直義で「——兄者あにじゃ」と呼びかけるなり内へ入って、彼一人だけ遠くに坐った。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだお目ざめにならんようだ。兄者あにじゃときてはどんなときでも、よう眠るおひとだからな。……ま、もすこし待つがいい」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者あにじゃ。……思い出してください。直義は鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみを今とて夢にも忘れてはおりません。兄者には、いつかあれを、お忘れではないのですか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「またしても、兄者あにじゃの念入りが、敵にきょを突かせたわ。せっかく勝っていた戦をよ。三井寺はもう奪り返せまい!」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者あにじゃ、敵はまだ彼方です。この近傍きんぼうには見当りません。ごゆるりとお支度あっても、よろしいかと思われます」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「師直。軍を退げろとは、わしにも言いおかれていたが、わしはいやだ。兄者あにじゃはそもそも、佐々木道誉をあまく見ている。いや恐れている! ばかな骨頂こっちょうだ!」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや何とはなく、大塔ノ宮なる御存在が、兄者あにじゃのお胸をむずかしくしているのでございましょうが」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……てまえの帰郷はとつぜんでも、帝のご脱出は、兄者あにじゃにとって、決して寝耳に水とは思われません
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「上へ逃げる敵は見のがせ。やがて下へ下へと、敵を追い降ろして行こうぞ。……あれ見よ、兄者あにじゃの一勢が、はるか彼方の街道から蓮池のあたりに見える。……兄者の軍にぐれまいぞ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「や、や、兄者あにじゃ。生田の方からもまた、これへ向ってくる一勢がありますぞ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者あにじゃ」と、師氏はうしろへ目をやって「——ちょっとお待ちなされませ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それはまた、はからずも……。兄者あにじゃ、何ぞお訊ねなされませぬか」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……兄者あにじゃ。これは失くさず大切に仕舞っておくことですな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瘧病おこりだそうだ……。数日らいの兄者あにじゃの御病気は」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう兄者あにじゃですか。何ぞ?」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者あにじゃ、おひとりですか」
兄者あにじゃ