せん)” の例文
皇帝の位をせんしていた袁術えんじゅつが、兄の袁紹えんしょうと合体して、伝国の玉璽を河北へ持ちゆかんとしているのを、半途にて討たんがためである。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
音楽の名をせんしてるいばらや枯れ葉の中に、少数の音楽家らの素朴なしかも精練された芸術を、彼はオリヴィエに助けられて見出した。
今は成金と称する新富豪さえも彼らに擬して、その邸宅と日常生活を民衆と区別し、その称呼をも御前様お姫様を以て自らせんしつつあります。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
孔子はの神話によって説明して使いを感服せしめた。ついで季桓子がその臣の陽虎に押えつけられ、魯は大夫より以下みなせんして正道より離るという情勢になった。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
人々は我を善人とし、我に棄て難き機根ありとして、競ひて自ら教育の任を負へり。恩人はその恩を以て我に臨みて我師たり。恩人ならぬ人はわが人好ひとよきに乘じてせんして我師となれり。
何如どうしたはずみだったか、松陰先生に心酔して了って、書風までつとめて其人に似せ、ひそかに何回猛士とかせんして喜んでいた迄は罪がないが、困った事には、斯うなると世間に余り偉い人が無くなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
陽虎は(四)において上をせんする魯の陪臣ばいしんとして出てくる。正しい政道を乱すような逆臣が、同時に少年孔子をも侮辱したのである。陽虎のゆえに孔子は季氏の饗宴から退いた。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それは百五十万乃至三百万人の有産階級のみが特権的に壟断ろうだんする政治であって、国民全体の政治とは如何にしてもいわれないのです。代議政治の美名をせんした財閥的専制政治と呼ぶのが至当です。
婦人も参政権を要求す (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)