偏倚へんい)” の例文
私は人間生活の高度な価値を父たり母たることに偏倚へんいさせて考えることを欲しません。私が賢母良妻主義に反対するのも一つは同じ理由からです。
平塚さんと私の論争 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
生存は相殺そうさつである。自然は偏倚へんいゆるさぬ。愛憎あいぞうは我等が宇宙にすがる二本の手である。好悪は人生を歩む左右の脚である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
肉と霊とを峻別しゅんべつるものの如く考えて、その一方に偏倚へんいするのを最上の生活と決めこむような禁慾主義の義務律法はそこに胚胎はいたいされるのではないか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すべての有限な統計的材料に免れ難い偶然的の偏倚へんいのために曲線は例のように不規則な脈動的な波を描いている。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
去りとて唯此こにのみ偏倚へんいすれば、或は身を修するに疎に成り行くゆゑ、終始己れに克ちて身を修する也。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
変化を主とすることは古今同じでも、つねに均整に注意し偏倚へんいを避けていた。起伏高低が大きいだけでなく、波動の中心を出来るだけ広い区域に、数多く設けようとした。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これらの費用だけ以上に平価から決して偏倚へんいし得ぬであろう。
粗野な行動に偏倚へんいされないことを祈ります。
新婦人協会の請願運動 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)