価値ねだん)” の例文
旧字:價値
照子嬢も声鋭く、「それは売物です。」と遣込やりこむれば、濶歩おおまたに引返し、「だから最初はじめに聞いたじゃないか、価値ねだんわかれば払うのさ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分の夫のような働きのない気の小さい人に衣物の価値ねだんを話したら、さぞ驚くことであろう。よい返事をせぬにきまっていると心では思いながら、如何にも躊躇したように答えた。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
ちょうど今一枚素敵すてきに好いのがいてあるんだ。それを買おうという望手のぞみての所へ価値ねだんの相談に行った帰りがけに、原君はここへ寄ったんだから、うまい機会じゃないか。是非買いたまえ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
衣類きるいに脚が生えやしめえし……草臥くたびれるんなら、こっちがさきだい。服装みなり価値ねだんづけをしやがって、畜生め。ああ、人間さがりたくはねえもんだ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自動車の便はたやすく得られて、しかも、旅館の隣が自動車屋だと聞いたから、価値ねだんを聞くと、思いのほかれんであった。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
価値ねだんひどうげす。植木屋だと、じゃあ鉢は要りませんか、と云って手を打つんでげすがな。画だけ引剥ひっぺがして差上げる訳にも参りませんで。どうぞ一番ひとつ御奮発を願いてえんで。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)