他様ひとさま)” の例文
旧字:他樣
『これ、お作や。御辞儀しねえかよ。其様そんな他様ひとさまの前で立つてるもんぢや無えぞよ。奈何どうして吾家うちの児はう行儀が不良わるいだらず——』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
他様ひとさまの眼を明るくして上げたいというわたしの心ばかりの功徳くどくのつもりでございますよ。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんな折には、和尚はきまつたやうに自分でそれを買戻して、一々残らず引き裂いて捨ててしまふ事にしてある。結構な事で、他様ひとさまに高い金銭かねを払はす程の代物でない事をよく知つてゐるのだ。
『これ——もうすこし起きておいでなさいよ。他様ひとさまが見て笑ふぢやありませんか。』と叱るやうに言つた。奥様は引取つて
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「自分じゃそう吸いたいとも思いませんが、他様ひとさまが燻していらっしゃると、つい頂きたく成る」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)