仁者じんしゃ)” の例文
天下泰平町内安全、産ある者は仁者じんしゃとなり、産無き者は志士となりて、賢哲天下に満ちたれば、六六館の慈善会は今にはじめぬ大当おおあたり
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
打つと、いわゆる一網打尽もうだじんで、一ぺんに何十ぴきもとってしまいます。殺さなくてもいいものまで殺す。それで釣りすれども網せず。仁者じんしゃの心得をのべたものです
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もろもろ仁者じんしゃを合せて至心に聴き給へ。我今疾翔大力しっしょうたいりきが威神力をけて梟鵄救護章の一節を講ぜんとす。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
晩成先生いささかたじろいだが、元来正直な君子くんし仁者じんしゃ敵なしであるから驚くこともない、平然として坐って、来意を手短に述べて、それから此処ここを教えてくれた遊歴者の噂をした。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうしてそれらの弟子は、その師が真に道の体得者であり、仁者じんしゃであり、覚者かくしゃであることを信じ切っていた。同時代の大衆がいかにその師を迫害し侮蔑しようとも、この信頼は決して揺るがなかった。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
我子の嫁には鬼のごときも、他人の妻には仏のごとく、動物憐護を説く舌は、かえって奴婢ぬひ叱責しっせきせずや。乞食に米銭をなげう仁者じんしゃ、悩める親に滋味を供せず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もろもろ仁者じんしゃを合せて至心にき給え。我今疾翔大力しっしょうたいりき威神力いじんりきけて梟鵄救護章の一節を講ぜんとす。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)