人麻呂ひとまろ)” の例文
文字は我々を征服する代りに、我々のために征服されました。私が昔知っていた土人に、かきもと人麻呂ひとまろと云う詩人があります。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(本を取り上げて開ける)……えゝと、(朗読)人麻呂ひとまろ。ぬばたまの黒髪山の山菅やますげに、小雨降りしき、しくしく思ほゆ。……ぬばたまのは枕言葉。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
僕はああ云ふ風流をもてあそびたくない。僕の尊敬する東洋趣味は、(前の東洋種と混合してはいけない)人麻呂ひとまろの歌を生み、玉畹ぎよくゑんの蘭を生み、芭蕉ばせをの句を生んだ精神である。
東西問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
むし人麻呂ひとまろ以来の短歌であり、芭蕉ばせを以来の俳句である。それを小説や戯曲ばかり幅をかせてゐるやうにひられるのは少くとも善良なる僕等には甚だ迷惑と言はなければならぬ。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)