京洛けいらく)” の例文
湖水中での良質の水がまれるというのでここを「もくもく」と云い、京洛けいらくの茶人はわざわざ自動車で水を汲ませに寄越す。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こんな図々しい女に引きずられて、またも京洛けいらくの天地にごうさらしに行くくらいなら、いっそ畜生谷へ落ちようとも、山を下らないのがよかった。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昼ならばここから一眸いちぼうになし得る京洛けいらくの町々も、特徴のある堂塔どうとうや大きな河をのぞいては、ただ全市の輪郭が闇の底おぼろに望まれるだけだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猫又ねこまたのゴシップの力で犬が猫又になる話や、ゴシップから鬼が生れて京洛けいらくをかけ廻る話などがそれである。現代の新聞のジャーナリズムは幾多の猫又を製造しまた帝都の真中に鬼を躍らせる。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かねては一月の余もと期せられつる京洛けいらくの遊より、中将父子の去月下旬にわかに帰り来たれる時、玄関にで迎えし者は、医ならざるも浪子の病勢おおかたならず進めるを疑うあたわざりき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
京洛けいらくちまたに満つる初笑
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ついさき程は叡山四明ヶ岳の上で、大いに時事を論じていたと見たが、もう京洛けいらくの真中へ入り込んで、こんな行動をとっている。また油断もすきもならぬ者共です。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また大いに、京洛けいらくの堂上や庶民に対しての政略とか、文化的な意図などもふくまれている。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「天下の広大を知らぬ京洛けいらく中心のやからが、思い上がった誤算にすぎぬ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京洛けいらくの天地に身を入れるにきまったものであります。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その日は、二月二十八日、京洛けいらくの春もたけなわの頃だった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京洛けいらくの天地を探っていた男。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)