九刻ここのつ)” の例文
『もうここ迄云ったら、誰の仕業しわざか、推量がつくだろう。——早く、御城内へ訴えに馳けて行け。九刻ここのつを過ぎると、間にあわぬぞ』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九刻ここのつごろから恐ろしいあらしの夜となった。樹々のうなり、車軸を流す地水。天を割り地を裂かんばかりに、一瞬間に閃めいては消える青白光の曲折。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夜の九刻ここのつごろ、押田仙十郎は宙を飛んで氷川下の屋敷へ帰ってきた。すぐ奥へ通って、吉左右きっそうを待ちかねている重左の前へ出た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あとには、夜の春雨が霏々ひひとしてむせび泣いて、九刻ここのつであろう、雲の低い空に、鐘の音が吸われていった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この旅人や小荷駄の一行は、その日の昼、八王子の宿を出て、今夜の九刻ここのつごろまでに、川越の城下へ行き着こうとするものです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなしに聞いた陣太刀づくりの脇差に、九刻ここのつさがりの陽ざしが躍っている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
九刻ここのつころ、御旅おたび汐見松しおみまつの下で落会っておくんなさいな。——私も、旅支度たびじたくをして行きますから」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九刻ここのつも半に近い寂寞せきばく……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ではすぐにでも戻って来ることかと思えば八刻やつになっても九刻ここのつぎになっても、一向やって来そうもない。で、しかたがなく、手当だけはして、一間に寝かせておきましたじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九刻ここのつ——といえばもう夜半、だいぶ間があるなあと、さかずきを見て清吉は独り思う。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……明日あすの晩、九刻ここのつごろ、甲府の南、城下はずれ、荒川べりの寺町——分りましたか、そこの鼻寺というところの近くであっしを待っていてください。そのときくわしい話をします。……鼻寺ですよ。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『もう、九刻ここのつに近かろうが……』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう九刻ここのつ(十二時)過ぎ——
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう、九刻ここのつかい」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ア、九刻ここのつ
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)