乙女をとめ)” の例文
悲しいことに黒木長者は、まだこの地藏の肌——乙女をとめの肌のやうに滑かに暖かいといふ肌——に、觸れて見たこともありません。
ふと、その過ぎ行く快樂の夢を米國の浪漫的ろうまんちく詩人アランポーが歌つた「おほがらす」の姿にして見た。レノアと云ふ世に亡き乙女をとめを戀して
もう一つの曲は「ドント、ファゲット、プリーズ」といふのださうで、日本語でいへば「忘れないでね……」なのである。表題は『港町の乙女をとめ』と易者さんは説明した。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
花の姿の美しと、乙女をとめを見たる時もあれど、慕はしものと我が胸に、影をとどめしことあらず
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ああ是れぞ横笛が最後の住家すみかよと思へば、流石さすがの瀧口入道も法衣ほふえの袖をしぼりあへず、世にありし時は花の如きあでやかなる乙女をとめなりしが、一旦無常の嵐にさそはれては、いづれのがれぬ古墳の一墓のあるじかや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
二人は前後して進んで、金箔きんぱくを置いた乙女をとめの肩へ唇を觸れました。續く黒裝束の五、六人も、こと/″\く覆面をはづして、同じやうに乙女の身體へ唇の雨を降らせます。
素よりチラリと見ただけですが、これは實に、馥郁ふくいくたる乙女をとめでした。