中二階ちゅうにかい)” の例文
宗近君はずんどぎり洋袴ズボンを二本ぬっと立てた。仏見笑ぶっけんしょう二人静ふたりしずか蜆子和尚けんすおしょうきた布袋ほていの置物を残して廊下つづきを中二階ちゅうにかいへ上る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるひは楽屋稲荷町いなりまちの混雑、中二階ちゅうにかい女形部屋おんながたへやてい、また欞子窓れんじまど縄暖簾なわのれんげたる怪しき入口に五井屋ごいやしるして大振袖おおふりそで駒下駄こまげた色子いろこ過ぎ行くさまを描きしは蔭間茶屋かげまぢゃやなるべきか。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「タタタ大変でござりまする、離れの中二階ちゅうにかいで……」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
六畳の中二階ちゅうにかいの、南を受けて明るきを足れりとせず、小気味よく開け放ちたる障子の外には、二尺の松が信楽しがらきはちに、わだかまる根を盛りあげて、くの字の影をえんに伏せる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余がとめるかと聞いたとき、年を取った方がはいと云って、若い方がこちらへと案内をするから、ついて行くと、荒れ果てた、広いをいくつも通り越して一番奥の、中二階ちゅうにかいへ案内をした。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そら始まった——じゃ行って来るよ」と宗近君は中二階ちゅうにかいを下りる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)