不省ふせい)” の例文
そのころ、人事不省ふせいの両人をのせた気球は、不連続線の中につき入って、はげしく翻弄ほうろうされていた。ものすごい上昇気流が、気球をひっぱりこんだから、たまらない。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わずらい付て四、五日目から人事不省ふせいおよそ一週間ばかりは何も知らない程の容体でしたが、さいわいにして全快に及び、衰弱はして居ましたれども、歳は若し、平生へいぜい身体からだの強壮なそのめでしょう
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あッという声がして、女中が襖をと思うに似ず、寂莫せきばくとして、ただ夫人のものいうと響くのが、ぶるぶると耳について、一筋ずつ髪の毛を伝うて動いて、人事不省ふせいならんとする、瞬間に異ならず。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)