下衆げす)” の例文
米俵を二俵ずつ、左右へ積んだ馬をひいて、汗衫かざみ一つの下衆げすが、三条坊門のつじを曲がりながら、汗もふかずに、炎天の大路おおじを南へ下って来る。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
逢ったが最後殺すとあっては、八重梅にとっては物騒な奴、俺にとっても邪魔な下衆げす、そっちで逃げようと焦せっても、こうなればこっちで許さない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
加賀の某郡の下衆げす七人一党として兵仗を具えて海に出で釣りを事とす、ある時風にうて苦しむと遥かに大きな島ありて、人がわざと引き寄するようにその島に船寄る
かみは、すこし微醺びくんを帯びたまま、郡司ぐんじが雪深いこしに下っている息子の自慢話などをしているのをききながら、折敷おしきや菓子などを運んでくる男女の下衆げすたちのなかに、一人の小がらな女に目をとめて
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
下衆げす上﨟じやうらふきはもなく
……それが女の心持ち! いえいえ下衆げすの、妾のような、女芸人の心持ち! ……これだけはお信じくださいまし! 今は、今こそ、生一本に、ア、あなたを愛しております! ……死ぬのだ
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
釣をする下衆げす これは騒々しい法師が来たものだ。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)