上半身かみはんしん)” の例文
逃げ出そうとでもするようにして上半身かみはんしんを窓の外へ出したところで、そこにあったセンターポールで顔を打って昏倒した。
魔の電柱 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それ深刻しんこく印度いんど化物ばけものとはくらべものにならぬ。たとへば、ケンタウルといふ惡神あくしん下半身しもはんしんうまで、上半身かみはんしん人間にんげんである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
彼等の上半身かみはんしん。「さん・せばすちあん」は船長にすがったまま、じっと空中を見つめている。何か狂人に近い表情。船長はやはり冷笑したまま、睫毛まつげ一つ動かさない。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
絶えず体に波を打たせていた蛇の下半身しもはんしんが、ずばたりと麦門冬りゅうのひげの植えてある雨垂落の上に落ちた。続いて上半身かみはんしんが這っていた窓の鴨居かもいの上をはずれて、首を籠に挿し込んだままぶらりと下がった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「さん・せばすちあん」の上半身かみはんしん。彼は急に十字を切る。それからほっとした表情を浮かべる。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
またギカントスは兩脚れうあしへび上半身かみはんしん人間にんげん、サチルスは兩脚れうあしひつじ上半かみはん人間にんげんである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
彼等の上半身かみはんしん。「さん・せばすちあん」はいよいよ興奮し、何か又船長に話しかける。船長は何とも返事をしない。が、ほとんど厳粛に「さん・せばすちあん」の顔を見つめている。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)