三行半みくだりはん)” の例文
父様なければ、母さんが、お一人してのお気苦労、せめて私が息ある内にと、取つて渡して下されし、三行半みくだりはんも、親の慈悲。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
机の上なるまだ墨の香の新しい一封の書状、お浜は不審顔ふしんがおに手に取って見ますと、意外にもこれは離縁状、俗にいう三行半みくだりはんでありましたから
たつた三行半みくだりはんで、あれだけ意味の長い物語は、どんな小説家だつで書きやうがない。応募者は少くとも百四十二弗四十仙位は手に握れる勘定だ。
「サ! おさよ殿、これなる五十両を受け取って、約束どおりに栄三郎から三行半みくだりはんを取って来てもらいたい。いかがでござる?——よもや嫌とは……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
手廻りの荷物だけまとめて、後と言わずに、今すぐ行ってくれ。三行半みくだりはんをやるか、迎えの人をやるか、それはもう少し考えてからの事だ——無分別なことをするな
直ぐ三行半みくだりはんを書いておくんなさい、黙っていては分りませんよ、サヽ早く書いておくんなさい
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
三行半みくだりはんの離縁状などは昔の物語にして、今日は全く別世界なりと知る可し。しかるに女大学七去の箇条中、第一舅姑に順ならざるの文字を尊属虐待侮辱等の意味に解したらば或は可ならん。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
三行半みくだりはん暇状ひまじょうを出す代りにこの結婚玉瑜を取ってしまうのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
三行半みくだりはんの案文さへ、腹の裏に繰返しつ、すわとばかり飛下りしに、お糸の家の事の体容易ならず、医師の車と覚しきは二台まで門辺に据へられつ
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
手廻りの荷物だけまとめて、後と言はずに、今直ぐ行つてくれ。三行半みくだりはんをやるか、迎への人をやるか、それはもう少し考へてからの事だ——無分別なことをするな
ぐに三行半みくだりはんを渡して出されますと、合せものは離れもので、再び帰ることは出来ないから、嫉妬やきもちの起った時は、嫉妬腹やきもちばらを立ってはいけません、悋気は疑り、疑りは悋気の玉子です。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「誰にことわった縁でもない、いまさら三行半みくだりはんにも及ぶまいが」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ふむ。おめえのねらって来たのは、はじめから金じゃあなくて、その三行半みくだりはんなのだな。そうわかれあ書かねえ。書くもんか。おいらとおめえは、どこまで行っても夫婦なのだ。もう、おせい様にもお駒にも、何の隠し立てもいらねえのだぜ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伊之助は去状で此の苦痛がのがれるなら、百本でも書きたいくらいでございますゆえ、そんならばと云うので三行半みくだりはんゆえ訳は有りませんから、サラ/\と書いて安兵衞の手に渡すを受取り