一酌いっしゃく)” の例文
仏頂寺弥助は鍵屋の辻の荒木又右衛門といったような形で縁台に腰をかけ、諏訪湖の煮肴にざかなを前に置いて、茶の代りに一酌いっしゃくを試みている。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
引払ひ候あいだ明後日夕景よりいつもの連中ばかりにていささ新屋しんおく落成のしるしまで一酌いっしゃくいたしたくぞんじ候間御迷惑ごめいわくながら何とぞ御枉駕ごおうがの栄を得たく懇請たてまつり候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
腹のうちには余計なと思いながら、ならぬとも云い難く、それならば家も狭しおれケは旅宿に帰るべしといってその晩は夜食のぜんの上、一酌いっしゃくよいうかれてそゞろあるき、鼻歌に酒のを吐き
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一酌いっしゃくの後。強右衛門は、名残を惜しむ人々へ
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)