一番鶏いちばんどり)” の例文
それが、まだ一番鶏いちばんどりも鳴かないのに、こっそり床をぬけ出して、酒臭いくちびるに、一切衆生いっさいしゅじょう皆成仏道かいじょうぶつどうの妙経を読誦しようとするのである。……
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一番鶏いちばんどり二番鶏を耳たしかに聞いて朝も平日つねよりははよう起き、含嗽手水うがいちょうずに見ぬ夢を洗って熱茶一杯に酒の残り香を払う折しも
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
阿母おっか一番鶏いちばんどりが鳴きました。時計はのうても夜は明けます。……鶏の目を明けよ、と云うおおせ、しかも、師匠のお家から、職人冥加みょうがかないました。御辞退を
それには古人が残してくれた色々な香料や試薬も注いでみようと思っている。その鍋を火山の火にかけて一晩おいた後に一番鶏いちばんどりが鳴いたら蓋をとってみようと思っている。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と主人も微笑していましたが、やがて一番鶏いちばんどりが鳴きました。
しかしとうとう一番鶏いちばんどりの鳴くころに願書ができた。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのうちにどこかで一番鶏いちばんどりが鳴いた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
桜頃さくらごろのある夜、お君さんはひとり机に向って、ほとんど一番鶏いちばんどりが啼く頃まで、桃色をしたレタア・ペエパアにせっせとペンを走らせ続けた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
勇ましい一番鶏いちばんどりの声がした。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)