一擲いってき)” の例文
むしろこの解散を機会に官僚も党人も国民全体も過去の政争的関係をすべて一擲いってきして、立憲国の代議政治の根本精神に立ち返り
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
彼はいまや、畢生ひっせいの智と力と、そして、のるかそるかの一擲いってきけて——越中魚崎での対上杉軍との戦場を捨て——急遽きゅうきょ、上洛の途中にあった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめ蝶吉と歌枕で逢曳あいびきの重なる時分、神月は玉司子爵の婿君であったから、一擲いってき千金はそのかたしとせざる処、蝶吉が身を苦界から救うのはあえて困難な事ではなかった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
霧は捲き去り捲き来って、天上山上すべての有象を一擲いってきして、宇宙の永劫に投じ去るかと思わせる。暫くして僅かのひまから鷲ヶ峰の雑木林が、直ぐ目の先に見えたが、倏忽しゅくこつに消え失せた。
女子霧ヶ峰登山記 (新字新仮名) / 島木赤彦(著)
なんにせよ多年の懸案であった学校生活を一擲いってきして、いよいよ文学者生活に入ることになったのであるからその、一言一行に生き生きした打晴れた心持の現われているのも道理あることであった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
イヤモウ人間は一擲いってき千金すべて是れ胆ぢや。嚢中自ら銭有りといふこともあるがな。心配いたすな。大鈞は私力なく万理自ら森着すぢや。イヤ誰しもが黄白には悩みおるて。ワアッハッハッハッハ。
「間合」というのは、かかり、呼吸、力学的な機微、勘と動作、あらゆるものを一擲いってきの瞬間に最も効果的にあつめようとするその電撃の間を計ることである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乃至ないし資本家に取って代ろうとする利己的支配的欲望とを一擲いってきして、同じく文化的労作者としての一席に就くことを、いずれも自発的に決行するに到るでしょう。
階級闘争の彼方へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
寒鯉かんごい一擲いってきしたる力かな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
諫書かんしょは、ふるえる手から、一擲いってきされて、かえりみられなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
との当然なる一擲いってきに附し、事態の急に一切を挙げたのだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)