一揃ひとそろい)” の例文
しかし見ると大椅子の上に昨夜母の持って来てくれたほかの衣裳が置いてあった。それはクララが好んで来た藤紫の一揃ひとそろいだった。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それは探すのに可なり手間取ったのですけれど、遂に私が運転手から買取ったものと、寸分違わぬ品が一揃ひとそろい丈け出て来ました。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「それに、貴下あなた打棄うっちゃっておいでなすったと聞きました、その金剛杖こんごうづえまで、一揃ひとそろい、驚いたものの目には、何か面当つらあてらしく飾りつけたもののように置いてある。……」
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その後椿岳は観音の本堂傍の淡島堂に移って、いわゆる浅草画十二枚を一揃ひとそろいとして描いて、十銭で売ったものです。近頃では北斎以後の画家として仏蘭西フランスなどへ行くそうです。