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ろうく
八重の桜も散りそむる春の末より
牡丹いまだ開かざる夏の初こそ、
老躯杖をたよりに墓をさぐりに出づべき時節なれ。
そのとき、
君長の面前から下がって来た一人の
宿禰が、
八尋殿を通って贄殿の方へ来た。彼は
痼疾の中風症に震える
老躯を数人の
使部に
護られて、若者の傍まで来ると立ち停った。
きのう
迄の僕とは、ちがうのだ。自信を
以て
邁進しよう。
一日の
労苦は、
一日にて
足れり。きょうは、なんだか、そんな気持だ。
全文をひとつに貫いて
至芸労苦の結晶が脈々として生きて流れているのである。