ごと)” の例文
その一足ごとに、そこいら中がギシリギシリと鳴って、頭の上の天井の隙間からポロポロとホコリが落ちて来たのにはイヨイヨ驚いた。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
牛乳とか玉子とか草花の束ねたのとかを停車場ステエシヨンごとに女が賣りに來る。私の机の上にも古い鑵に水を入れて差された鈴蘭の花があつた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
実をいうと、私は、彼の作品が喝采されるごとに、云い様のない嫉妬しっとを感じずにはいられなかった。私は子供らしい敵意をさえ抱いた。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この、日ごとに訴え出られ、また彼らみずからも見聞するいざこざは、このままの現状をどこまで維持しても解決されないことである。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
牛乳とか玉子とか草花の束ねたのとかを停車場ステエシヨンごとに女が売りに来る。私の机の上にも古いくわんに水を入れて差された鈴蘭の花があつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
仕事はさかんで、島をおとのうとおさの音をほとんど戸ごとに聞くでありましょう。特色ある織物としてこの島にとっては大切な仕事であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
第六 毎日まいにち一度いちど冷水ひやみづあるひ微温湯ぬるゆにて身體からだ清潔きれいぬぐひとり、肌着はだぎ着替きかへべし。入浴ふろは六七日目にちめごとなるたけあつからざるるべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
僕は一足ごとに汗を道におとした。それでも、山をのぼりつめて、くだりにならうといふところに腰をおろして弁当を食ひはじめた。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
自分でも驚くほどに変った自分の顔貌をうつし眺めるごとに、いつでもそうした事など考えては、いろ/\の感慨にふけるのが常である。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
そして、馬車や自動車が、あの橋板をとゞろかすごとに、静子も自分が来たのではないかと、彼女の小さい胸をとどろかしているに違いない。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それから三日目には四本目、次の二日目には五本目、——そのたびごとに幽里子の注文は熱烈になり、東野南次の筆も脂が乗ってきました。
後世こうせい地上ちじやうきたるべき善美ぜんびなる生活せいくわつのこと、自分じぶんをして一ぷんごとにも壓制者あつせいしや殘忍ざんにん愚鈍ぐどんいきどほらしむるところの、まど鐵格子てつがうしのことなどである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あいちやんは一ぱうした、一ぱううへと一まいごとしらべてから、その眞中まんなかつてました、どうしたらふたゝられるだらうかとあやしみながら。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その内大君の利益は五十万元すなわち一週ごとに一万元ばかりなり。一週間この利益なしといえども御老中その不都合を覚ゆることなきを得べしや
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
大洋タイヤン小洋ショウヤンと銅貨との計算法がとてもヤヤコシクて、これを上手に活用すると、お銭を細かくこわすごとにお銭の数と量と価値とを増すし
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一音ごとにはっきり聞き取られる位であった。多分今宵こよいの祭りの序開じょびらきの曲であろう。花やかな、晴がましい、金笛きんてきの響のようであった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
大豆打でえづぶちにかつころがつたてえに面中つらぢうめどだらけにしてなあ」剽輕へうきん相手あひてます/\惡口あくこうたくましくした。群衆ぐんしふ一聲ひとこゑをはごとわらひどよめいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
せんだって東北凶作の義捐金を二円とか三円とか出してから、逢う人ごとに義捐をとられた、とられたと吹聴ふいちょうしているくらいである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その超新兵器は、発明されて世の中に出るごとに、何かしら恐ろしき騒ぎをひきおこし、気の弱い連中を毎回気絶させている次第であった。
男は其処そこへ来るごとに直立して、硝子扉ごしの私達を見上げ莞爾かんじとしては挙手きょしゅの礼をしました。私達もだまって素直に礼を返してやりました。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「なれるとも。最初見習職工に志願するんだよ。それから三ヶ月すると一日十銭の日給になるよ。それから三ヶ月目ごとに昇給するんだ。」
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
第三蕪村の句を入れるもよろしけれど一句ごとに蕪村の名あるはうるさし。蕪村とはじめにあればそれにて十分也。(これは飄亭より注意)
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
平日しめしていはれしは、我雪頽なだれうたれしとき筆をりてたりしは、たふと仏経ぶつきやうなりしゆゑたゞにやはとて一ごと念仏ねんぶつ申て書居かきをれり
何度も何度も、彼女が頻繁ひんぱんに呼び続けると、その度ごとにリリーは返辞をするのであったが、こんなことは、ついぞ今迄にないことだった。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
折あるごとに彼は身内のものや父を知っている人達に父のことを尋ねた。民助兄にも。義雄兄にも。田辺の小父にも。田辺のお婆さんにも。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「使い古されているのは、歌のほうの話でしょう。梅は年々新しいつぼみを持つ、うぐいすは年ごとに新しく生まれますよ、奥さん」
梅にうぐいす (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
思ふさまにたたかれてられてその二三日は立居も苦しく、夕ぐれごと父親てておや空車からぐるまを五十軒の茶屋が軒まで運ぶにさへ、三公はどうかしたか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
部屋ごとの花瓶に素枯すがれた花は、このあいだに女中が取り捨ててしまう。二階三階の真鍮しんちゅうの手すりも、この間に下男ボオイが磨くらしい。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
停車場ごとに駈け出していって水を汲んできたり、おまけに子供達をねかすと、自分は赤ン坊を抱いたまま突ったっていなければならなかった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
曼荼羅には亀甲きっこう形が縫いつけられているが、そのひとつごとに、この文章(原文は四字ずつの漢文)をあらわしたのだという。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あのときはとうのステッキにすがるようにして、宿屋の裏の山径やまみちなどへ散歩に行くと、一日ごとに、そこいらをうずめている落葉の量が増える一方で
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
涼風一陣吹到るごとに、ませがきによろぼい懸る夕顔の影法師が婆娑ばさとして舞い出し、さてわ百合ゆりの葉末にすがる露のたまが、忽ちほたると成ッて飛迷う。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
家元いえもとでは相変わらずの薄志弱行と人ごとに思われるのが彼を深く責める事や、葉子に手紙を出したいと思ってあらゆる手がかりを尋ねたけれども
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
云送らんと艷書ふみに認め懷中しつゝ好機よきをりもあらばお浪に渡さんものと來るたびごとうかゞひ居けれ共其ひまのあらざればむなしく光陰つきひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、開拓されたところは黒々と、さながら墨汁をこぼしたかのように、一鍬ごとに梅三爺の足許から拡がって行った。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
三尺ごとに石柱を建て、方三間の囲の中央に、四尺五寸許の高さに丸く土を盛り上げたもので、墓石もなく他に何もない。
春の大方山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
五日ごとの市の日には月よりも正確に面から面へ渡って来る。郷里が清州だと、誇らしげに言い言いしてはいたが、そこへおちついたためしはない。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
武太さんに同情する者は、ひささんのおかみばかりである。「彼様な女房にょうぼ持ってるンだもの」と、武太さんを人が悪く言うごとに武太さんを弁護する。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこで与八は、村の有識者——いやしくも自分より以上の智能者であると見ると、機会あるごとに就いて学ぶことに、熱心綿密を極めておりました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
紹興中、予福州に在り、何晋之の大著を見しに、自ら言ふ、嘗て張文潜に従うて遊ぶ、文潜の此詩を哦するを見るごとに、以て及ぶ可らずと為せしと。
驚異おどろきのあまり、我は身をわが導者に向はしむ、そのさま事あるごとに己が第一の恃處たのみどころに馳せ歸る稚兒をさなごの如くなりき 一—三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
各字ごとに再び左へ戻って来て右へ書き、又次の字は左へ戻るという風におよそ速力や能率の逆のことに専念している。
文字と速力と文学 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
人の噂に味方みかた敗北はいぼくを聞くごとに、無念むねんさ、もどかしさに耐へ得ず、雙の腕をやくして法體ほつたいの今更變へ難きを恨むのみ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
主人公が、膳を買つて來て、それを、自分で、丁寧にいたり、疊の上において眺めたり、寢る時には枕もとに置いて、目をさますごとに眺めたり、する。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
そうして、生きている時と同じように、彼女と一緒に寝起きをしていたのみか、自宅に吉凶のことあるごとに、一々彼女に話して聞かせたというのである。
逢う人ごとに私の若い時分の悪事を懺悔してお話を致します、私も若い時分の放蕩と云うものは、お賤は知りませんが中々一通りじゃアありませんでしたよ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
土田正三郎は十太夫の危篤きとくが伝えられたとき、仏間にこもって夜を明かした。そういう噂が弘まった。十太夫の死後も、七日ごとの供養をひそかに行なった。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
庭で、はさみの音がしている。もう一朝ごとに花の小さくなり出した朝顔の垣越しに、植木鋏を持った白髪の老人が
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎月まいげつごと發表はつぺうする貿易ぼうえき状態じやうたい發表毎はつぺうごと改善かいぜんされて、十一ぐわつ二十輸入超過額ゆにふてうくわがくは七千萬圓まんゑん減額げんがくした。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)