おしえ)” の例文
元来行長は切利支丹宗の帰依者であったから、その家臣も多くこのおしえを奉じて居たのであって、益田好次も早くより之を信じて居た。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わたくしは抽斎の師となるべき人物を数えて京水けいすいに及ぶに当って、ここに京水の身上しんしょうに関するうたがいしるして、世の人のおしえを受けたい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わが大乗のおしえをはじめて具現されたのは天皇にてあらせられた。天皇信仰という独自のものがわが史上には存在していたのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
いわんやその現に雲漢より降るを見ざる者においてをや。これ天子より庶人しょじんに至るまで、みな必ずおしえなくんばあるべからざるゆえんなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
種彦は日ごとおしえを乞いにと尋ねて来る門弟たちをも次第々々に遠ざけて、唯一人二階の一間ひとま閉籠とじこもったまま、昼となく夜となく
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「何も知らない者でございますから、無礼ばかりいたしました、どうか、その罪をお許しくだされて、道のおしえをお授けくださいますように」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
而して、今万物自然の理を得、其れいずくにぞ哀念かこれ有らん、とえる、流石さすが孔孟仏老こうもうぶつろうおしえおいて得るところあるの言なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
八幡はちまん、これにきまった、と鬼神がおしえたもうた存念。且つはまた、老人が、工夫、辛労しんろう、日頃のおもいが、影となってあらわれた、これでこそと、なあ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他山の石もって玉をみがくべしというおしえが世に伝えられているが、僕は各国人と交わり、各国人の長所を学びたい心持こころもちする。例えば某国人ぼうこくじんすこぶる勤勉である。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また先生のおしえしたがいて赤十字社病院にいりたる後も、先生来問らいもんありてるところの医官いかんに談じ特に予が事をたくせられたるを以て、一方ひとかたならず便宜べんぎを得たり。
が、二葉亭は極めて狷介な負け嫌いであると同時にまた極めて謙遜けんそんであって、如何いかなる人に対しても必ず先ず謙虚しておしえを待つの礼をおろそかにしなかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
(この話は北町奉行所の与力であった佐久間長敬翁のおしえによるところが多い。ここにそれを断っておく。筆者)
拷問の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
えらい人になるためにさ……」と子供こどもはいった。彼の頭は、祖父そふおしえと子供らしいゆめとで一ぱいになっていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
一、俳句をものしたる時はその道の先輩に示しておしえふも善し。初心の者の恥かしがるはかへつてわろし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
子上を産んだ子思の奥様が離縁になってのち死んだ時、子上のためには実母でありますが、忌服きふくを受けさせませんから、子思の門人が聖人のおしえに背くと思って
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
近頃は高田保馬さんと左右田喜一郎そうだきいちろう博士の論文とから更にいろいろのおしえを受けたことをここに感謝します。
婦人改造の基礎的考察 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
双方共々に道徳のおしえもあり、経済の議論もあり、文に武におの/\長所短所ありながら、さて国勢の大体より見れば富国強兵、最大多数、最大幸福の一段いつだんに至れば
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
このときの虫もみなさきに竜の考えたように後にお釈迦さまからおしえけてまことの道に入りました。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これ祖先伝来のままにて何ら外国の影響を受けざる、まじりなき、純の純なるおしえを説かんとの意である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ちょうどとなりいえの二かいには、中学校ちゅうがっこうへ、おしええに博物はくぶつ教師きょうしりていました。博物はくぶつ教師きょうしは、よく円形えんけい眼鏡めがねをかけて、かおしてこちらをのぞくのであります。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
われわれは彼がどんな師匠に就いておしえを受けたか知らないが、彼はふだん「男女の区別」を厳守し、かつまた異端を排斥する正気せいきがあった。たとえば尼、偽毛唐のるい
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
物のことわりあるべきすべ、よろずおしえごとをしも、何の道くれの道といふことは、異国あだしくに沙汰さたなり。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この運命から僕を救い得る人があるなら、僕はつつしんでおしえを奉じます。その人は僕の救主すくいぬしです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と早速駁撃ばくげきを加えたのが事の起りだった。十六の少年と二十二の青年だから段が違う。私はその都度つどやり込められる口惜しさに、占部牧師を訪れておしえを求めるようになった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
予輩らがしばしば子規子の門をたたいおしええるや、月に幾回なるを知らずといえども、会談の日ごとに必ず新問題を聞かざることなかりき、旧を改め新を悟り追求いよいよ高く
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私は此等の人達から知らず知らずの間に受けた多くのおしえについて、いつも感謝している。
奥秩父 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
小山の妻君はおしえに従って深き鍋を火鉢に載せたるが玉子の箱を台所より客の前に持ち来り
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そう考えましてわたくしだけは、生活のために必要なあるおしえを得たのでございますの。
芝居というものは辻学問といって仁義道徳のおしえを籠めたものとか、役者は河原者というけれど東京の俳優はそうばかりではなく、よい役者になると礼儀の正しい立派な人間ばかりで
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黒田清輝という先生に私はおしえを受けた事があるが、自分はどんな絵が出来上るかを常に知らずに描いている。初めから、かかる絵を描きたいと思った事がないといわれた事を記憶する。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
夫に二心ふたごころなきを神の道とのおしえは古るし。神の道に従うの心易きも知らずといわじ。心易きを自ら捨てて、捨てたる後の苦しみをうれしと見しも君がためなり。春風しゅんぷうに心なく、花おのずから開く。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかなるおしえしんじても産土うぶすなかみ司配しはいけることにかわりはないが、ただほとけすくいをしんってるものは、その迷夢まよいめるまで、しばらく仏教ぶっきょう僧侶そうりょなどに監督かんとくまかせることもある。
という大望をっていましたし、新生寺さんもまた、現在の空虚なおしえに飽きたらないで、宗教の一大改革を心密かに考えていた矢先だったので、私達はすっかり共鳴してしまった訳なんです。
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
血を見せてはならぬのり浄地じょうちおしえの霊場なのです。——いくたびか抜きかかった小柄こづかを押え押えて、必死と黒い影を追いました。今十歩、今十歩と、思われたとき、残念でした。無念でした。
すなわ種々いろいろある手段によって三摩地さまち境涯きょうがいに入れば自ら五官の力を借りずに事物を正しく知ることが出来る、古来聖人君子の説かれたおしえは皆この五官のまよいを捨てよと云う事に他ならないのである。
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
まだ誠の神のおしえを耳に入れようともしない余吾之介ですが、それでも近頃は、鹿の子の敬虔な日常に引入ひきいれられて、何んとなく謙虚な心構えになって行くのをどんなに嬉しく眺めて来たことでしょう。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし杜子春は仙人のおしえ通り、何とも返事をしずにいました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人を救うことをおおしえ下され、またすくいをおさずけ下さるのは
実に当然のおしえであるが、かく述べられた太子の心底には、醜怪な政争や人間の無残な慾念よくねんが、地獄絵のごとく映じていたのでもあろうか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
克勤こくきんの、昼の為せるところ、夜はすなわち天にもうしたるに合せ考うれば、孝孺が善良の父、方正の師、孔孟こうもうの正大純粋のおしえ徳光とくこう恵風けいふう浸涵しんかんして
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
漢学者のやうにのたまわくで何か事あれば直ぐに七去しちきょおしえたてに取るやうな野暮な心ならば初めから芸者引かせて女房にするなぞは大きな間違ならんと。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あれは、えらい僧正だって、旦那の勧める説教を聞きはじめてから、方々へ参詣まいったり、おしえを聞いたりするんだがね。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
抽斎は鑑賞家として古画をもてあそんだが、多く買い集むることをばしなかった。谷文晁たにぶんちょうおしえを受けて、実用の図を作る外に、往々自ら人物山水をもえがいた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
およそまつりごとを行いおしえく、まず信を人に得るにあり。信ぜられてしかるのちに令おこなわれ、教立つ。いまだ信ぜられずんば、令して行れず、いましめ守られざるなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
さても/\卑怯なるかな、ソンな窮窟な事で人間世界が渡れるものか、世間の人が妙な処に用心するのはサゾ忙しいことであろう、自分は古人のおしえしばられる気はないと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だから彼もそう考えて、実際どれもこれも聖賢のおしえに合致していることをやったんだが、ただ惜しいことに、後になってから「心の駒を引き締めることが出来なかった」
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
羽子板のおおきさが六尺三寸と云うので、まさか、朝飯前には中々持ち切れません、それでカチーリ/\と突きますが、く突けたもので、親のおしえより役者の押絵の方が大事だと見えて
早くから梟の身のあさましいことをご覚悟かくご遊ばされ、出離の道を求められたじゃげなが、とうとうその一心の甲斐かいあって、疾翔大力さまにめぐりあい、ついにその尊いおしえ聴聞ちょうもんあって
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
(但しこの句につきては我いまだ全く解せざる処あり。湯婆に𨣉せとは果して何のためにするにや。ただ寒き故に自ら手足を暖めんとにや、または他に意味あるにや。大方のおしえつ)
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
◯神は外より探りべし、また内より悟り得べし。神を歴史において見、従って神のおしえを国民的、社会的、政治的に見るもひとつの見方である。されどこれのみにとどまる時は浅薄におちいりやすい。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)