御所ごしょ)” の例文
また、あるいはそなたも知らぬであろうが、おそれ多いことながら、いまの御所ごしょのお模様もようは、その貧しい人々よりもまさるものがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は御所ごしょにつとめ、幼いころからその御所の奥ふかくに住み、中宮ちゅうぐうの御身のまわりのこまごまとした雑用をはたすのが役目だった。
(新字新仮名) / 山川方夫(著)
頼朝がだ病気にならない時、御所ごしょの女房頭周防のむすめの十五になる女の子が、どこが悪いと云うことなしにわずらっていてくなった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
御寝所ごしんじょの下のへびかえるのふしぎも、あれら親子おやこ御所ごしょ役人やくにんのだれかとしめしわせて、わざわざれていたものかもれません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
乳母うばの六条のひざにのって、いつも院の御所ごしょ出仕しゅっしする時と同じように、何もしらないで片言かたことを言ってわしに話しかけていました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
長年の御所ごしょづとめに馴れてきたので、万事の立居振舞から容姿なども、そこらの女とくらべると、数等華美で、洗練されていた。
宗近君は椅子いす横平おうへいな腰を据えてさっきから隣りのことを聴いている。御室おむろ御所ごしょ春寒はるさむに、めいをたまわる琵琶びわの風流は知るはずがない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まず黒木の御所ごしょをつくり、大塔宮を奉戴ほうたいし、四方よもの山々に関を設け、路を切りふさいで往来を吟味し、叔父竹原八郎入道へ、今回の事情を申しやった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
或る日瀧道たきみちの終点で落ち合ひ、神有しんゆう電車で有馬へ行つて、御所ごしょぼうの二階座敷で半日ばかり遊んで暮らしたことがあつたが、涼しい渓川たにがわの音を聞きながら
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まず手近から片付けることゝ御所ごしょを堺町御門から何とか御門へ通り抜けた。停留場で電車を待っている間に
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
余は青山の通を御所ごしょの方へあるいて、交番に巡査を見出し、其指図で北町裏の宿屋を一二軒敲き起した。寤めは寤たが、満員と体の好いうそを云って謝絶された。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あの堀川の御所ごしょうかがわれます通り、若殿様が若王子にゃくおうじに御造りになった竜田たつたの院は、御規模こそ小そうございますが、菅相丞かんしょうじょうの御歌をそのままな、紅葉もみじばかりの御庭と申し、その御庭を縫っている
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
少女の頃に見たあの御所ごしょの中のお局にゆくお廊下の長かったこと
私の思い出 (新字新仮名) / 柳原白蓮(著)
春の夜に尊き御所ごしょる身かな
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
承久じょうきゅうノ乱で、この佐渡へ流され給うた順徳じゅんとく上皇の黒木くろき御所ごしょやら、日蓮上人が氷柱つららの内に幽居した塚原ノ三昧堂まいどうなどへも、まいってみた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中納言ちゅうなごんはさっそく天子てんしさまの御所ごしょがって、大事だいじむすめ大江山おおえやまおにられたことをくわしくもうげて、どうぞ一にちもはやくおに退治たいじして
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
第三日は自天王の御所ごしょ跡である小橡ことち竜泉寺りゅうせんじ、北山宮の御墓等にもうで、大台ヶ原山に登り山中に一泊。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
尾道は夏祭りの多い港であるが、住吉明神の祭礼は「おたび」と言って、街はずれの「御所ごしょ」という海べの草っぱのあき地に神輿が移って、一夜を仮泊されるのであった。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
春の夜に尊き御所ごしょる身かな
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
そこで日本独楽にほんごまのはじまりは、行成大納言ゆきなりだいなごん小松こまつつぶりに村濃むらごの糸をそえまして、御所ごしょでまわしたのがヤンヤとはやりだしましたはじめ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼政よりまさおおせをうけたまわりますと、さっそく鎧胴よろいどうの上に直垂ひたたれ烏帽子えぼうしかぶって、丁七唱ちょうしちとなう猪早太いのはやたという二人ふたり家来けらいをつれて、御所ごしょのおにわにつめました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一手は大河内の自天王の御所ごしょを襲い、一手はこうたにの将軍の宮の御所に押し寄せた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
言明どおり、能登は朝に夕に、いや時刻さだめず、黒木くろき御所ごしょを見廻りにくる。時にはわざとらしく「……エヘン」と咳払せきばらいなどして通った。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてせっかく御所ごしょつかえながらひくくらいうずもれていて、人にもしられずにいる山守やまもりがたかい山の上の月をわずかにからするように
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そしてそれをみやこ四方しほう見晴みはらす東山ひがしやまのてっぺんにって行って、御所ごしょほうかおのむくようにててうずめました。これが将軍塚しょうぐんづかこりでございます。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いいなア、いいなア、さすがに天子てんしさまの都だけあるなあ。オーむこうに見えるのが御所ごしょの屋根だな。かすみをひいてのとおりだ。二じょう、三条、四条、五条。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるとき天子てんしさまの御所ごしょ毎晩まいばん不思議ふしぎ魔物まものあらわれて、そのあらわれる時刻じこくになると、天子てんしさまはきゅうにおねつが出て、おこりというはげしいやまいをおみになりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこで毎晩まいばん御所ごしょまも武士ぶしおおぜい、天子てんしさまのおやすみになる御殿ごてん床下ゆかしたずのばんをして、どうかしてこのあやしいごえ正体しょうたい見届みとどけようといたしました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
このごろ御所ごしょえをやって、天子てんしさまのおやすみになる御殿ごてんはしらてたときに、大工だいくがそそっかしく、東北うしとらすみはしらの下にへびかえるめにしてしまったのだ。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろいまから千年余ねんあまりもむかし桓武天皇かんむてんのう京都きょうとにはじめて御所ごしょをおつくりになったころ、天子てんしさまのおともをして奈良ならみやこからきょうみやこうつってたうちの一人ひとりでした。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それからそのこうに青々あおあおかすんでいる御所ごしょ松林まつばやしをはるかにおがんだにちがいありません。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
保名やすなもこれをしおに京都きょうとって、阿倍あべいえおこときたと、たいそうよろこんで、童子どうじれて京都きょうとのぼりました。そして天子てんしさまの御所ごしょがって、おねがいのすじもうげました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きになったこともあるでしょうが、じつはわたしは、むかしなにがしのいんさまの御所ごしょ使つかわれた玉藻前たまものまえというものでございます。もとをいいますと天竺てんじくんだ九のきつねでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
といって、はじめはおことわりをもうげたのですが、どうしてもおれにならないので、しかたなしに長男ちょうなん義朝よしともをのけたほか子供こどもたちをのこらずれて、新院しんいん御所ごしょがることになりました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
為朝ためともはやがて二十八家来けらいをつれて新院しんいん御所ごしょがりました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこで、八幡太郎はちまんたろうにおいいつけになって、御所ごしょ警固けいごをさせることになりました。義家よしいえおおせをうけると、すぐよろい直垂ひたたれかためて、弓矢ゆみやをもって御所ごしょのおにわのまん中にって見張みはりをしていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)