山雀やまがら)” の例文
雀やひわ山雀やまがらや山鳩の、啼声ばかりが繁く聞こえる、鎮守の森に包まれて、気絶して倒れた主水の姿が、みじめに痛々しく眺められた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それによく似た五十雀ごじゅうから山雀やまがら小雀こがら、いずれも雀の字をガラとんでいるのは、クラと原一つであると見て大抵たいてい誤りはあるまい。
小禽とは、すずめ山雀やまがら四十雀しじふから、ひは、百舌もず、みそさざい、かけす、つぐみ、すべて形小にして、力ないものは、みな小禽ぢゃ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
うぐいす山雀やまがら、目白、文鳥、十姉妹じゅうしまつなどの籠の上に載っていたウソをその時はじめて詳しく観察した。さっきの声はそのウソの鳴音だったのである。
木彫ウソを作った時 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
瓢箪ひょうたんに宿る山雀やまがら、と言ううたがある。雀は樋の中がすきらしい。五、六羽、また、七、八羽、横にずらりと並んで、顔を出しているのが常である。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへは時々、百舌もず山雀やまがら、文鳥、ひわ、目白、さまざまな小鳥がブチまけたように下りて来て、日ねもす歌っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見世物みせものには猿芝居さるしばい山雀やまがらの曲芸、ろくろ首、山男、地獄極楽のからくりなどという、もうこの頃ではたんと見られないものが軒をならべて出ていました。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
山雀やまがらの芸当やら、花屋敷の人形やら、珍世界、水族館などと色々出る。妹は気をゆるめてもう話に酔つて居る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
その開閉器スイッチの間には、山雀やまがらひなが挾まれていて、把手とってを引く糸が切れておりました。ああ、あの糸はたしか、地下の棺中から引かれたに相違ございません。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
山雀やまがらを捕りに来たのでありましょう、鳥籠に山雀が二羽も三羽も入ってばたばたするのを下げながらもち竿を片手に持って、二三人の男の子が口笛を鳴らしながら
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして大きな百貨店で、首の動く張子はりことらだとか、くちばしでかねをたたく山雀やまがらだとか、いろんなめずらしいものを買い集めて、持っていたお給金を大方おおかたつかいはたしました。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
だが一体どう云ふものだらう、自分にも譃をつきたい気のするのは。今度は小鳥屋。どこもかしこも鳥籠だらけだなあ。おや、御亭主も気楽さうに山雀やまがらの籠の中に坐つてゐる!
つぐみひは獦子鳥あとり深山鳥みやま頬白ほゝじろ山雀やまがら四十雀しじふから——とてもかぞへつくすことが出來できません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
山雀やまがらの曲芸やダークのあやつりが客を呼んでゐた奥山花屋敷の古風な木づくりのもん
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
延若は山雀やまがらのやうな声を立てて笑つた。そして小山田庄左衛門はその儘になつた。
かれひるには室内しつないまどからまど往来おうらいし、あるいはトルコふう寐台ねだいあぐらいて、山雀やまがらのようにもなくさえずり、小声こごえうたい、ヒヒヒと頓興とんきょうわらしたりしているが、よる祈祷きとうをするときでも
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すずめ岩燕いわつばめ山雀やまがら、かわらひわなどが、入り交り、立ち交り、彼を悩ます。彼らはその翼で彼の枝の先をこづく。あたりの空気は、彼らのきれぎれの鳴き声で沸き返る。やがて、彼らは退散する。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
わずかに其処に常住するからす——これもこの大きな松の梢の茂みの中に見る時おもひの外の美しい姿となるものである、ことに雨にいゝ——季節によつて往来する山雀やまがら四十雀しじゆうから松雀まつめひよどり、椋鳥、つぐみ
沼津千本松原 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
先祖代々の家の、物静かな部屋に坐って、家付きの落ちついた家具に取囲まれながら、まぶしいほどの新緑の庭で山雀やまがらが啼きかわしたり、又、遠くの方で村の時計の鳴るのを聞いたりしているのは。
卜居:津村信夫に (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
山雀やまがらのをぢさんが読む古雑誌
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
眼をなや山雀やまがら
秋の日 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
小禽とは、すずめ山雀やまがら四十雀しじゅうから、ひわ、百舌もず、みそさざい、かけす、つぐみ、すべて形小にして、力ないものは、みな小禽じゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
渡鳥わたりどり小雀こがら山雀やまがら四十雀しじふから五十雀ごじふから目白めじろきくいたゞき、あとりをおほみゝにす。椋鳥むくどりすくなし。つぐみもつとおほし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山雀やまがらやら、四十雀しじゅうからやら、その他の小鳥が、チェンチェンツーツーと林の暗い、繁みで小啼ささなきをしていた。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、歯の間に突っ込まれている、小鳥の骸骨らしいのは、たぶん早期埋葬防止装置を妨げたという、山雀やまがらの死体に違いないのだ。ねえ怖ろしいことじゃないか。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だが一体どう云ふものだらう、自分にも譃をつきたい気のするのは。今度は小鳥屋。どこもかしこも鳥籠だらけだなあ。おや、御亭主ごていしゆも気楽さうに山雀やまがらの籠の中に坐つてゐる!
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
せっかく日本から買って来た山雀やまがら張子はりことらてて、みんなと一しょにボウトに乗りうつりましたが、それでもセルゲイとの約束の武者人形だけはしっかりかかえていたのです。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
とがや紫蝶のあやつり人形もよかろうし、松島亀之助の山雀やまがらの曲芸、猿芝居だって使おうとおもう、そういう連中をあれこれと舞台一杯に手配しておいてその上大道具大仕掛大鳴物で
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
かれひるには室内しつないまどからまど往來わうらいし、あるひはトルコふう寐臺ねだいあぐらいて、山雀やまがらのやうにもなくさへづり、小聲こゞゑうたひ、ヒヽヽと頓興とんきようわらしたりてゐるが、よる祈祷きたうをするときでも、猶且やはり元氣げんき
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「忠兵衛つてあの山雀やまがらの事で御座んすかい、もんどり上手の……」
ええとあれは山雀やまがらの芸当、それからこいつは徳蔵手品
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
みんなもまるでせっかく友だちになった子うまが遠くへやられたよう、せっかくった山雀やまがらに逃げられたように思いました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
雀か、山雀やまがらか、そうでもない。それでもないト考えて七面鳥に思いあたった時、なまぬるい音調で
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、犯人の冷酷な意志は、山雀やまがらの屍骸と父よ、吾も人の子なりパテル・ホモ・スム——の一文にとどめられるのであるから、当然、久我鎮子が、道徳の最も頽廃たいはいした形式と、叫んだのも無理ではないかもしれない。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
山雀やまがらによく似てゐるな。山雀かい、お前たちは」
山雀 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
傍の雑木林で四十雀しじゅうからや、山雀やまがらが鳴いています。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
手品じゃアありません、独楽こま廻しじゃ有りません。球乗たまのりでも、猿芝居でも、山雀やまがらの芸でもないの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
磧も狭しと見世物小屋を掛けつらねて、猿芝居さるしばい、娘軽業かるわざ山雀やまがらの芸当、剣の刃渡り、き人形、名所ののぞ機関からくり、電気手品、盲人相撲めくらずもう、評判の大蛇だいじゃ天狗てんぐ骸骨がいこつ、手なし娘
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この、秋はまたいつも、食通大得意、というものは、木の実時なり、実り頃、実家の土産のきじ、山鳥、小雀こがら山雀やまがら四十雀しじゅうから、色どりの色羽を、ばらばらと辻にき、ひさしに散らす。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あきふゆ遊山ゆさんる、桜山さくらやまも、桃谷もゝたにも、あの梅林ばいりんも、菖蒲あやめいけみんな父様とつちやんので、頬白ほゝじろだの、目白めじろだの、山雀やまがらだのが、このまどから堤防どてきしや、やなぎもとや、蛇籠じやかごうへるのがえる
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
頬白ほおじろ山雀やまがら雲雀ひばりなどが、ばらばらになって唄っているから、綺麗きれいな着物を着た間屋のむすめだの、金満家かねもちの隠居だの、ひさごを腰へ提げたり、花の枝をかついだりして千鳥足で通るのがある。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頬白ほゝじろ山雀やまがら雲雀ひばりなどが、ばら/\になつてうたつてるから、綺麗きれい着物きもの問屋とひやむすめだの、金満家かねもち隠居いんきよだの、ひさごこしげたり、はなえだをかついだりして千鳥足ちどりあしとほるのがある
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
少々たいらな盆地になった、その温泉場へ入りますと、火沙汰ひざたはまた格別、……ひどいもので、村はずれには、落葉、枯葉、焼灰に交って、獦子鳥あとり頬白ほおじろ山雀やまがらひわ小雀こがらなどと言う、あかだ、青だ
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むらかゝると、降積ふりつもつた大竹藪おほたけやぶ弓形ゆみなりあつしたので、眞白まつしろ隧道トンネルくゞときすゞめが、ばら/\と千鳥ちどり兩方りやうはう飛交とびかはして小蓑こみのみだつばさに、あゐ萌黄もえぎくれなゐの、おぼろ蝋燭らふそくみだれたのは、ひわ山雀やまがらうそ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うをよりけものよりむしとりはしによくる、すゞめか、山雀やまがらか、さうでもない。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……ひよどり南天燭なんてんの実、山雀やまがら胡桃くるみですか、いっそ鶯が梅のつぼみをこぼしたのなら知らない事——草稿持込で食っている人間が煮豆を転がす様子では、色恋の沙汰ではありません。——それだのに……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まちの人が春、夏、秋、冬、遊山に来る、桜山も、桃谷も、あの梅林も、菖蒲あやめの池もみんな父様おとっさんので、頬白だの、目白だの、山雀やまがらだのが、この窓から堤防どての岸や、柳のもとや、蛇籠の上に居るのが見える
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)