黒糸縅くろいとおどし)” の例文
浪士らは行く先に種々さまざまな形見を残した。景蔵のところへは特に世話になった礼だと言って、副将田丸稲右衛門が所伝の黒糸縅くろいとおどし甲冑片袖かっちゅうかたそでを残した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて清盛は、赤地錦あかじにしき直垂ひたたれに、黒糸縅くろいとおどしの腹巻、白金物しろかなもの打った胸板むないたを着け、愛用の小長刀こなぎなたをかいばさんだ物々しい装立いでたちで、側近の貞能を呼びつけた。
桐生氏きりゅうしの子孫の家に蔵する所の輝勝てるかつの像を見るに、南蛮胴なんばんどう黒糸縅くろいとおどしそで草摺くさずりの附いたよろいを着、水牛のつののような巨大な脇立わきだてのあるかぶとかぶって、右の手に朱色の采旆さいはいを持ち
階段をあがったすぐの所に、まるで生きた人間の様に鎧櫃よろいびつの上に腰かけている、二つの飾り具足ぐそく、一つは黒糸縅くろいとおどしのいかめしいので、もう一つはあれが緋縅ひおどしと申すのでしょうか、黒ずんで
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)