黄葉もみじ)” の例文
一首は、自分の愛する妻が、秋山の黄葉もみじの茂きがため、その中に迷い入ってしまった。その妻を尋ね求めんに道が分からない、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
落葉はいまだ三分の一にも達しない、光るばかり黄葉もみじを薄暗い空気でつつんだ趣き、あかるいようでも物の判らぬ夢のようの感じだ、いやどうしても適当の形容語が出来ない
八幡の森 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
野は秋も暮れて木枯こがらしの風が立った。裏の森の銀杏樹いちょう黄葉もみじして夕の空を美しくいろどった。垣根道にはそりかえった落葉ががさがさところがって行く。もず鳴音なきごえがけたたましく聞える。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
百部は、はやくに写し果した。その後は、千部手写の発願をした。冬は春になり、夏山と繁った春日山も、既に黄葉もみじして、其がもう散りはじめた。蟋蟀こおろぎは、昼もその一面に鳴くようになった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
黄葉もみじして隠れ現る零余子蔓むかごづる
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そこで若し榛原は萩原で、其頃萩の花が既に過ぎてしまったとすると、萩の花でなくて萩の黄葉もみじであるのかも知れない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
穂積皇子ほづみのみこの御歌二首中の一つで、一首の意は、今日の朝に雁の声を聞いた、もう春日山は黄葉もみじしたであろうか。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)