麻酔ますい)” の例文
そして、全身の神経が麻酔ますいしかけたところへ、ぱッと、マグネシュウムのつよい閃光せんこうと爆音が、彼女をなぐりつけたように驚かした。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大事を前にして、どうも不思議な自分の行動だった。酔いではなく、麻酔ますいのようにも思う——と帆村は悔恨かいこんていである。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その瞬間にこれは多分、最前からへやの中の息苦しい女の匂いに混っている、麻酔ますい薬の透明な芳香に、いくらか脳髄を犯されたせいかも知れないと思った。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「入院していたんだ。盲腸の手術が済むと同時にあの大地震さ。麻酔ますいにかゝっていたんだもの」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし倉地には恐ろしい無恥がある。そして一度倉地が女をおのれの力の下に取りひしいだら、いかなる女も二度と倉地からのがれる事のできないような奇怪の麻酔ますいの力を持っている。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
麻酔ますい薬です。……まもなく、名探偵は、自動車の中で気をうしなっていました。
仮面の恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
混血児チャアリイを相手に、上になり下になりと組合くみあっていた龍介は、さらに三人の怪紳士のために押えつけられて、麻酔ますい剤を嗅がされてついにがん字がらめに縛られたままこんこんと眠ってしまった。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なんとかいいました……嗅いただけでもグッタリと人を麻酔ますいさせるおそろしい薬が入れてあった物だと折紙をつけました
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それほどまでにあなたはわたしがお憎いの?……麻酔ますい中にわたしのいう囈口うわごとでも聞いておいて笑い話の種になさろうというのね。えゝ、ようごさいますいらっしゃいまし、御覧に入れますから。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「児戯に類する敵の作戦だ。麻酔ますいにかけられてはならん。前進ただ前進あるのみ」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)