いすか)” の例文
兵粮方ひょうろうかたの親族に死なれ、それからやむを得ず再び玄関をひらくと、祝融しゅくゆうの神に憎まれて全焼まるやけと相成ったじゃ、それからというものはる事なす事いすかはし
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
することなすことがいすかの嘴とくい違って、二度も親札と異った札を出したり、三枚目を出すのでないことをうっかり忘れて、大きく一つ手を振りまわしざま
やがてふと放心したように「いすかは松の実だけ喰べる……」と呟やいた、そしてそのこえで我に返った。
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
往きにへその近所が氷りつきそうであった事を思い出しつつ、今か今かと冷たい足を運んで行ったが、いすかはしい方へばかり、食い違って、行けば行くほど、水が浅くなる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ああ、何もかもいすかはし——と落胆がっかりしたが、とにかく、そのだいがわりになっている旅川周馬という者に会い、絶家したお千絵様が、どこに身を落ちつけたか、それを尋ねてみるにしかずと門をくぐった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是非なく、今晩二人の不義者を殺し、其の場を去らず切腹なし、殿様の難義をお救い申そうと思うた事はいすかはし喰違くいちがい、とんでもない間違をいたしました、主人の為にあだを討とうと思ったに
珍らしくいすかが五羽も到来したので、志保とお萱とで手料理を作り、忌日に集った門人たちに馳走をした、これまでにもおりおり食事くらいは出していたが、料理に酒まで付けたのは初めてのことで
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)