高粱こうりゃん)” の例文
ちっとも言うことを聞かないで、綱がこんがらかって、高粱こうりゃんの切株だらけの畑中に立往生をしたのは、滑稽こっけいだったね。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
主人翁御自慢の高粱こうりゃんパンも非常に美味しく頂戴した。それに続いて五分つき米飯。わけぎ味噌汁。もやしあえもの。白魚白味トジ清汁。亜米利加鱒乾物酢。
お茶の湯満腹談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
緩慢な丘陵や、沼地や、高粱こうりゃんの切株が残っている畠があった。彼等は、そこを進んだ。いつのまにか、本隊のいる部落は、赭土の丘に、かくれて見えなくなった。
前哨 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
あれよりは……あそこにいるよりは、この闊々ひろびろとした野の方がいい。どれほど好いかしれぬ。満洲の野は荒漠こうばくとして何もない。畑にはもう熟しかけた高粱こうりゃんが連なっているばかりだ。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
道さえも、その両側がかなりはばをとって菜園になっており、その道を子供が歩くときでも、両側からおけのように葉をたれている玉蜀黍とうもろこし高粱こうりゃんをかきわけて行かねばならなかった。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
馬にいたるまで土とほこりに汚れきった一頭立ての軽馬車を雑然とかためて、高粱こうりゃんむちを鳴らして何か大声に罵りあいながら客待ちしているのが、遠くさわがしいだけにうつろに眺められる。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
側へ往ってひろってみると、それは高粱こうりゃんの葉であった。皆が笑って言った。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)